さんには一度だけお会いした事があります。 ステージ写真撮影のため開演前の会場を機材を抱えうろうろしていたら、背後から、リハーサル中の杉原さんの ピアソラ に強烈なパンチをくらいました。
頭蓋骨の内側とか鼻腔の奥がきな臭くなるような衝撃、とっさに、津軽の太棹に張り倒された!って思いました。 ヴァイオリニストさんには失礼かもしれませんが、思わず和楽器を連想させる、奇数倍音たっぷりの = これって、もしかしてノイズ? そういう響きでした。 以来、私にとって彼女は要チェック人物となり、音楽館に度々登場して頂く事になります。 今では、ご本人には何の承諾も無く、てか、何の通知も無く、ヴィオラ奏者の
そんなある日、杉原さんとそのグループが CD を出されました。 テーマはモーツァルト。 Vn 、Va 、Gt 、つまり ヴァイオリン と ヴィオラ 、ギターの3人でモーツァルトのオペラを演奏するという趣向です。 詳細は
この CD 、演目を愛し、熟知していると思われる録音エンジニアさんの残響や定位の設定が素晴らしいです。 また、たっぷり時間をかけ、ちょうどいい湯加減を醸し出してきたなぁ っていう、メンバー間ならではの … Vn と Va の、お互い無理をしてまでピッタリ合わせる必要ないよね、という暗黙の了解。 女の争いに関わりたくないと、にこにこ眺め、淡々とリズムを刻んでいる Gt 。 この絶妙なバランス、掛け合いが、失礼ながら笑っちゃうほど楽しく、ぜひ一度聴いて頂きたい一枚です。
は Gt ソロではなく、Vn と Gt のための曲だそうです。 Vn と Gt 。 ギタリストで、作曲家でもあるウルクズノフならではの組み合わせですね。 頂いたメールにつき、
【 事務局員の独り言 】 04/22 、
杉原 さんからメールを頂きました。 この文章、曲目解説としてこのページに載せるために書かれたものではなく 、てか、本番を控えた演奏家 = アーティストの心の揺らぎと自負 = 自分への励ましと覚悟が、多少文脈が支離滅裂だったり … 気持ちの揺れるまま、そのまま綴られていて … 私のような素人には受け止めきれないほどの心情が伝わってきて すっごく感動しました。 で、そのまま転載させて頂きたいと強く想ったのですが、どうしてもご本人の許可が降りません。 私でいいのかなぁ と思いつつ、でも、ご来館のお客さまにもご紹介したいし … 他に誰もいないし … 役不足ですが頑張ってまとめさせて頂きます。
まずバッハですが …
この曲、杉原さんが学生時代 、本番途中で頭が真っ白になり数秒止まってしまった、思い出の曲なのだそうです。 思わず先生を見てしまい、後で
「 私の顔見ても、何も書いてないわよ! 」 って叱られたんだとか。
ずらっと舞曲が並び、バッハの曲の中では管弦楽組曲とかブランデンブルグ協奏曲系の、明るく、軽く、楽しい感じです。 1曲目の前奏曲、3曲目のガボットはテレビなどでも時々耳にします。 ご来館の皆さまもどこかでお聴きになってるはずです。 杉原さん、どこで止まっちゃったんでしょうか。 バッハは可愛い
ガボット ( 舞曲の一種 = 当時の宮廷での優雅な踊りの曲です ) を創る天才で、この曲や
BWV1068-3 のピッコロ・トランペット、
BWV816-4 のクラヴィコードなど、まだまだ沢山あるのですが、着飾った紳士淑女が楽しそうに踊っている姿が目に浮かぶ名曲ばかりです。
無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 第3番 ホ長調 BWV1006
1. Preludio
2. Loure
3. Gavotte en Rondeau
4. Menuet I
5. Menuet II
6. Bourree
7. Gigue
彼女、本番での空白の数秒以来、人前でこの曲を弾いた事は無かったらしいのですが … 平成と共に忌まわしい記憶とはサヨナラしたいとの事でした。 さて、トラウマ克服なるか。 杉原さん、頑張って! ^^
ヒナステラ はアルゼンチンの作曲家さんです。 ただ、杉原さんのメールには 「 ヒナステラは歌物とピアノ曲の編曲。」 と、何故か たった これだけで … ^^;
なので …
Wiki によりますと、ヒナステラは20世紀、ラテン・アメリカで最も重要な作曲家の一人という事です。 團伊玖磨さんや芥川也寸志さんより10才ほど年上の方ですね。
1曲目の Milonga =
ミロンガ 、元々は歌曲で、後に作曲家自身がピアノ曲にも編曲しているみたいです。 2曲目の
ロンド もピアノ作品のようです。 アルゼンチンの童謡ってどんななんでしょうか。 ロンド とありますので ( 形を変えながら? ) 何回か繰り返し出てくるんじゃないかと思います。
さて、
ウルクズノフ さん。 1970年、ブルガリア生まれという事は、今年49才になられるのでしょうか。 現在、コンサート活動のほか、パリでギターの教授をされてるようです。 ギタリスト兼作曲家さんですね。 今回の杉原さんのリサイタルは、伴奏がピアノではなくギターとなってますので、ヒナステラとシューベルトの曲はピアノ伴奏の部分をギターが担当 = ギター用に編曲して演奏する事になると思うのですが、この 『 ブルガリア風ソナチネ 』 だけ、唯一、正真正銘、ヴァイオリンとギターのためのオリジナル作品だという事です。
杉原さん、一年ほど前に たまたま 見かけたブルガリアン・ボイスのグループの動画で、その声の重なりに 『
どハマり 』 したのだそうで、ぶつかる和音と金属的にも聞こえるような声のパワーにやられてしまったのだとか。 それがきっかけで
ウルクズノフ までたどり着いたらしいです。
ブルガリア風? んー、ヨーグルトとお相撲さんの琴欧州関くらいしか浮かんでこない私なので、さっきから
ブルガリアン・ヴォイス の
YouTube を いくつか 聴かせて頂きながらこれを書いてます。 ただし、杉原さんが聴かれたものと、全然別のものかもしれませんけれど。
へー 。
杉原さんがおっしゃるには ぶつかる和音 … 不協和音 …
んー 、『 屋根の上のヴァイオリン弾き 』 の原題 って
“ Fiddler on the Roof ” だってご存知でしょうか。
ヴァイオリン じゃなく
フィドル。肩の上に乗せるのではなく胸の前で弾きます。 そういう響きですね。 しかも、ケルトやペリマンニの音楽というよりは、トルコの軍楽隊とか、ヒマラヤ登山のドキュメンタリー番組に出てくる村のおばあさんの歌声。 個人的には
朝崎郁恵 さん ( 例えば
あはがり ) を思い出してました。
ノイズ交じりの
え゙ や
あ゙ の発音、みたいな。
ブルガリアの民族音楽って、こんな感じなんでしょうか。
これ、新橋や深川、神楽坂の路地裏ではなく … 本文で書かせて頂いた津軽の太棹に通ずる、日本でも かつて寒村の小路で聴かれた響きかもしれません。 杉原さんの深層心理の中に、てか、私たちの体の底に、やっぱ そういう何かが潜んでるんだと思います。 ブルガリアン・ボイスを耳にし、彼女、きっと無意識に体が反応し、Risonanza = 共鳴? 共振? しちゃったんじゃないでしょうか。
ほー、図らずも本文最初の部分とつながってきました。 もしかしたら私はピアソラに殴られたのではなく 、杉原さんとも共有する、自分のルーツに張り倒されたのかもしれません。
アタナス・ウルクズノフ 『 ブルガリア風ソナチネ 』
「 独特の変拍子、ぶつかる和音、2度や9度などが結構多く使われてい 」 るのだそうで、
【 第1楽章 】 殆んど pizzicato
ピッツ = ピッチカートって右手の人差し指だけじゃなく 、場合によっては中指でも、さらには左手でも弾 ( はじ ) くってご存知ですか。 例えば左手の人差し指で弦を押さえ、薬指で弾 ( はじ ) いたりするらしいです。 まぁ プロフェッショナルならではの技なんでしょうが、器用なもんだなぁ。 んで …
ピチカート、はじめは右手、左手交えてのピチカート数小節。
次に右手だけのピチカート数小節。
そしてようやく弓を持てる場所がやってくるのですが、
そこまでくるとひとまず ホッ とするというか、
弓の有り難さが身に染みます。
速いテンポで長く続くピチカートの小節は、かなりハードです。
そんなもんなんでしょうか。 そんなもんなんでしょうね。
途中 、Gt と Vn が言いたい事を好き勝手言い合ってるような箇所があり、
その後 、静寂 。 シーーーン …
そして また 何事も無かったかのように 、
冒頭と同じピチカートが続き … 終わります。
この1楽章 、けっこう 面白そうですよね。 興味津々。
【 第2楽章 】 少し和っぽい雰囲気もある。
この 『
和っぽい 』 を払拭するのが難しいらしいです。
『
ブルガリアっぽく 』 を意識しても、
なんだか日本のお殿様とかが 「
おな~り~ 」 という声とともに
出てきそうな雰囲気になってしまってます。
ブルガリアに近づきたい!
なのだとか。 西を向けば 多少近づくかも。 ^^; 2楽章も楽しみです。
【 第3楽章 】 ギターの動きの上で 風になる。
ヴァイオリンは風に乗って聞こえてくるような、
突然、不協和音での絶叫系になったり … 笑笑
ブルガリアン・ボイス風のぶつかる響きをひたすら作っていく感じ。
これ ( つまり
2度や9度を多用する、ぶつかる響き を作っていく ) って、きっと大変なんでしょうね。 意識して不協和音を作る? きれいにハモるのだって難しいんだもの。 でも聴かせて頂く側からすると他人事だから、とっても興味深く 、3楽章も やっぱ面白そうだなぁ。 ^^
シューベルトはアルペジオーネの曲で? ^^
意味ワカンネー お客様に、少々補足させて頂きます。
アルペジオーネ とは楽器の名称です。 シューベルトの時代、そういう名前の楽器があったらしいです。「 この楽器が奏でる
アルペジオ、美しいですよ 」 って意味でしょうか。 外見が
ヴィオラ・ダ・ガンバ に似てるなー って感じですが、
ヴィオラ・ダ・ガンバ でイメージがわかない方は、( 小ぶりの ) チェロとギターを組み合わせた、みたいに想像して下さい。 6弦で、フレットもありますが、チェロのように縦に構え、足に挟み、弓で弾きます。 ただし、
エンドピン と呼ばれる、床に立てかけるストッパー機構が無いので、本当に足で挟んで演奏してたみたいです。 で、この楽器のためにシューベルトが作曲したのが 『
アルペジオーネ・ソナタ 』 っつうわけです。 正式には 『 アルペジオーネとピアノのためのソナタ 』 というみたいですが、今回は、ピアノの部分をギター用に編曲されたもので演奏する事になります。
この曲、大変美しく優雅で素敵なのですが、現在
アルペジオーネ での演奏は、実際問題として現実的ではなく、曲の音域から ヴィオラ ( もしくはチェロ ) の曲、という事になってます。 ここで一つ気になるのですが、じゃ、ヴァイオリンが出せる最低音 = 具体的には1オクターブ低い 『 ソ 』 より、さらに低い音が曲の途中で出てきちゃったらどうするの? パンフレットには A moll = 原調で演奏しますって書いてあるよ! って事で
楽譜 を調べてみました。 間違ってたらごめんなさい。 早速18小節冒頭に 『 ソ 』 より低い 『 レ 』 の音が出てくるように素人には見受けられるのですが … ここ、どうなっちゃうのでしょうか。 鼻で
うなる のかなぁ。 今夜は眠れないかも。
コンサート当日までのお楽しみですね。
杉原さんも …
やはりビオラやチェロが向いているだろうなぁというところが沢山あります。
でも、年齢とともにシューベルトに惹かれるようになってきて、
( 私の楽器は ヴィオラではなく ) ヴァイオリンだけど、
今だからチャレンジしてみたいなぁと思いました。
と、おっしゃってます。 杉原さんに歳をとられると私は棺桶に入らなきゃならず … んー、困ったなぁ。
ちょっと待った! せめて、このコンサートの後にして … いえ、杉原さんには永遠の美少女でいて頂きたいですっ! よろしくお願い申し上げます。
※ ヴィオラで演奏されるアルペジオーネ・ソナタを聴いて頂くのにちょうどいいコンサートがありました。 奏者は須田祥子さん。 現在、日本で一番露出度の高いヴィオラ奏者さん。 杉原さんのヴァイオリンと聴き比べて頂くのに申し分ない方だと思います。 杉原さんが今、この曲に求めているもの、この曲で表現したい姿が、より鮮明に見えてくるんじゃないでしょうか。 『 ビオラは歌う 3 』 という CD リリースを記念して全国ツアー ( 計6ヵ所 ) が企画されてるようですが、全ての会場でアルペジオーネ・ソナタが演奏されるわけではなさそうです。 事務局のお勧めは7月7日。 七夕の日は相模湖交流センターへお運び頂くってのはいかがでしょうか。 ぜひ。ちなみに、前出の
吉瀬弥恵子さんが、ライセンス切れのヴィオラ曲の楽譜を、無登録、
無料でダウンロード 出来るようにして下さってます。 先ほど調べた楽譜も、そのページのものを使わせて頂きました。 ここ、演奏するのに際し吉瀬さんの
ワンポイント・アドバイス もありますし、YouTube にもリンクが貼られてますので試聴も可能で、ヴィオラ科の学生さんが大いに利用されてるみたいです。 私は、数少ないヴィオラ曲の一覧表としても活用させて頂いてます。 当館、左サイドバー、広告欄に
リンク画像 が貼ってありますので よろしければどうぞ。 ヴァイオリン曲もありますよ。
杉原桐子 ヴァイオリン プレ・リサイタル in 東京
杉原さんから連絡を頂きました。 東京で
プレ・リサイタル が開催されるようです。 詳細はまだ未定のようですが 「 リサイタル1週間前に東京方面の、宮前平というところのカフェ的なところのオープン記念? 」 だそうです。 メール本文のままです。面白かったのでそのままコピペしました。 彼女、東京は詳しくないのでこんな表現でしたが、田園都市線の宮前平付近ではないでしょうか。 詳細が判明し次第、順次発表させて頂きます。
新作映画 『 ものがたりをめぐる物語 』 の完成に向けた演奏会
2019年07月14日 (日) 14:00 ~ 17:00 ( 開場 13:30 )
演目 :
リサイタル曲 + そのほか
会費 :¥3,000
(
Club Sasala 会員 :¥2,700 、大学生・高校生は半額 、中学生以下は無料 )
※ 奏者を交え 、お茶 + お菓子を食べながら気軽に歓談する時間を設定。
≫
コンサート、ご案内ページ≫
コンサート、お申込みページ※ 以下
未確認 。 ただ今
問い合わせ中 です。
主催 :
株式会社ささらプロダクション ☎ 044-982-7233
≫
お問い合わせフォーム会場 : Restaurant & Café 『
谷戸の下 』 ( 07/11 オープン )
〒216-0005 神奈川県川崎市宮前区土橋 7-26-1 ☎ 044-982-3552
東急田園都市線、宮前平駅より 1,000 m 徒歩 約15分 ≫
G-map東名川崎料金所出口より 680 m
樅の木の下で 杉原桐子 / 笠原恒則 デュオ・コンサート in 新潟
2019/05/18 、長野県小諸市で行われた杉原さんご出演の
コンサートの
追加公演 が 08/17 に決まりました。 この場をお借りし、謹んでお知らせさせて頂きます。
≫
詳細はこちらから杉原 桐子 ヴァイオリン
笠原 恒則 チェンバロ
2019年08月17日 (土) 14:00 ~ 19:00 ~ ( 2回公演 )
於 :
ギャラリー 蔵織 1階 ≫
アクセス〒951-8062 新潟県
新潟市中央区西堀前通1番町 700番地 1F ☎ 025-211-8080